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アートエステ作品
アートエステ ~エッセイ~ 「親愛なるあなたに」
お母様への誕生日プレゼントとして ご依頼いただきました。 ――――― 親愛なるあなたに ――――― むかし、世界の言語は一つだけだったとの逸話がある。聖書に出てくる「バベルの塔」という話だ。 当時、愚かな人間たちの中で、塔を作って神が住む天にのぼろう... -
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アートエステ ~エッセイ~ 「夢、時々くもり」
―――― 夢、時々くもり ――――― 「姿勢を取れーー!」 両手を胸の前で交差させる姿勢を固め、片足を一歩前へ出す。 自衛隊のパラシュート部隊。 時速240キロで飛ぶ飛行機から、地上340メートルの高さから飛ぶ。 例えると、東京タワーの高さを新幹線が... -
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アートエステ ~エッセイ~ 「シークレットラブ」
「もう!だから言ったじゃない、気をつけてって!」 自分の不器用さに悪びれる顔をしている幸男に、明美は声を上げた。 明美の父は写真家だ。 還暦を過ぎ、準備も大変になってきて、これが最後の個展になる。 その手伝いとし... -
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アートエステ ~エッセイ~ 「お照(ひ)さま」
「おーい、母さんはどこ行っただ?」 「いつもの水やりで庭にいるんじゃない?」 娘の真由美が朝食のお膳立てをしながら、朔太郎の問いに答える。 縁側に差し込む朝日を左に浴びながら、朔太郎は、妻・照子の元へ向かった。 家の庭は、今日もうらうらとあ... -
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アートエステ ~エッセイ~ 「たったひとつだけ」
冬の夜の海は、毎日表情を変える。 満月の日は、月灯りで、辺りが明るくなるし、 雲がかかった日は、黒い折り紙に潜りこんだかと思うほど、 暗い静かな世界になる。 今日は、どちらかというと、後者に近い。 こんな日は、地球がまるで瞳を閉じているようだ... -
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アートエステ ~エッセイ~ 「マザー」
午後の日差しが差し込む病室は、 静かな時間がゆっくり流れ、 窓から見える銀杏の葉は風にのり、可愛げにこちらに手を振っている。 まるで修道院のような清らかさがここにはある。 涼太は母・房江が倒れてからというもの、 時... -
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アートエステ ~エッセイ~ 「カーテンコールをもう一度」
瑤子は、古びたホテルのベッドの上で、事が終わるのを待っている。 「1日に何人も大変ね・・」 時に、こんな言葉をかけられたりもするが、今日のような客はなんてことはない。 こういうタイプは、ちょっとした演技と、美貌の肉体さえあれば満足するのだ。... -
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アートエステ ~エッセイ~ 「いのちを編む」
―― ちいちゃん、また自分をごまかして、、。 そんなの無理して行かなくていいのに ――― 千鶴子の心を見透かしていながらも、諭すように、優しい声が千鶴子の脳裏に聞こえてくる。 「え、、そうかなあ。 だって、一応出てお... -
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アートエステ ~エッセイ~ 「刹那より輝く」
日本海に隣接するこの街は、 冬ともなると、横殴りの厳しい海風が叩きつけてくる。 響子は、買い物袋の重たさを感じながらも、 手袋を纏った右手を自分の頬に当て、 足早に、定食屋「かっぽうぎ」へと向かっていた。 佐上響子... -
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アートエステ ~エッセイ~ 「おかえり、わたし」
駅が近づくにつれ、故郷・山梨の景色が萌子の瞳に迫ってくる。 東京では見られないリアルな山々が、鮮明に映る。 ナイフのような岩稜、あらわになった山肌、民家の向こうに連なる稜線、 肩を並べるように、 どの山も腰をずっしり降ろし、天に向かって高く...
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